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執筆者の写真Masashi Matsunaga

欧州における製品安全性評価と各種毒性試験をリードするオランダToxys社

学術都市からバイオサイエンスの産業都市に変化するオランダ・ライデン


オランダの主要空港アムステルダム・スキポール空港から電車でわずか20分に位置するライデン(Leiden)は、古くから日本とのつながりの深い都市として知られています。駅 (Leiden Central) を境に東側は、水運に支えられた古くからの街並みが残る一方で、西側には広大なサイエンスパーク (Leiden Bio Science Park) が広がり、ライデン大学・大学病院を中心に、企業・スタートアップが研究開発や、ビジネスの拠点を構えています。アステラス製薬やニコンといった日系の主要企業も進出しています。Toxys社もこのサイエンスパーク内に位置し、まずはそのアクセスの至便性を実感できます。




Toxys社について


Toxys は、2014年にライデン大学医療センター (Leiden University Medical Center) からスピンアウトした企業で、現在は数十名の研究者を抱える企業として発展を続けています。同社は、市場に出回る製品や、新規に開発された化合物に対する細胞毒性、将来的な遺伝毒性などを、動物を使わずに正確に評価する技術を有しており、動物を実験に用いることを厳しく規制している欧州の基準をクリアしています。細胞毒性や遺伝毒性という言葉を聞くと、評価を依頼する企業は製薬企業に限定されると考えがちですが、その顧客領域は広く、化学メーカー、食品添加物を取り扱う企業、化粧品メーカー、香料メーカー等、多岐に渡ります。また、毒性検査というと、臨床試験に関連する製品開発後期に実施されるイメージを持ちますが、Toxys社は、開発の初期から中期の段階で、企業や大学側からの自主的な評価依頼を受け、「毒性」に関するポートフォリオを総合的に評価し、企業や大学がその開発を継続するか、中断するのかといった判断を的確に行うための材料にするという独自の戦略も展開しています。Toxys社は、専門家による各種試験レポートに高い信頼性が保証されているのみならず、その考察力にも定評があり、事後の依頼者とのディスカッションや、コンサルテーションを非常に重視することが、ユーザーからの高い評価や信頼を得ている理由にもなっています。



Toxys社の日本戦略について(インタビュー)


今回は、同社創業者CEO (Chief Executive Officer) の Giel Hendriks 氏と、CBO (Chief Business Officer) の Paula van Rossum 氏に時間を頂き、主に同社の日本戦略についてインタビューを行いました。



Toxys社事業における日本でのビジネスの状況を教えてください:


日本におけるビジネスはまだまだこれからという段階です。欧米における実績と信頼をケーススタディとし、これから日本のユーザー開拓やマーケット戦略を強化させて行く予定です。



日本のお客様を対象とした際のToxys社としての特徴はなんですか?:


「欧州」それから「非動物由来」がキーワードになると考えています。欧州市場や、厳しい当地の規制(特に動物およびそれを材料とした試験)に精通する当社から発行される試験成績書は、欧州に事業進出する日本企業様にとっても大きなメリットとなります。日本で実施された日本語をベースとした試験成績書を「翻訳」した成績書よりも、当地において当地の言語で書かれた試験成績書の信頼性が高いことは、明らかな違いとなるでしょう。

Toxys社が提供する分析サービスについてもう少し詳しく教えてください:

はい。まず、Toxysにおいて最も多くの依頼を受ける遺伝毒性 (genetic toxicity) は、癌化を含めた化学物質の様々な遺伝的毒性を、ToxTracker Suite という独自のフローサイトメトリーベースの分析技術を用いて解析を行います。ToxTrackerは、複数のバイオマーカーを組み合わせて、遺伝毒性の予測因子となるDNAの損傷だけでなく、酸化によるストレス、タンパク質のミスフォールディング、一般的な細胞ストレス等の非遺伝毒性マーカーもも評価に含みます。開発根拠や化学的バックデータについては、こちらをご参照ください。全ての評価は、サンプル受領後速やかに実施され、2~3週間後にレポートが発行されます。

また、ヒトを含めた哺乳類に対する発生毒性を評価するために、幹細胞技術を取り入れた ReproTracker や、細胞ストレスに適切に応答するToxProfiler、クローン原生の定量的評価や細胞増殖とアポトーシスの検出を可能にするCytotoxicityアッセイも提供しており、これらを組み合わせるでより信頼性の高い毒性に関するリスク情報を提供することが出来ます。

 


サンプル輸送と匿名性保持について教えてください:


まず、サンプルの匿名性、評価後の適切な廃棄については、Toxys内の専門チームにおいて厳しく管理されており、またこれらの管理は国際的な基準もクリアしています。お客様の開発品に対する秘匿性保持は、当社でも特に厳しく管理していると同時に、お客様は化合物等の詳細情報をマスキングしてサンプルを提供することも可能です。最低限の情報として、分子量や溶解条件(適切な溶媒)等について、サンプルに同封する用紙に記入をいたければ、当社にて予備実験を行い再確認も行います。

また、サンプルの発送については、今まではお客様自身で梱包後、オランダまでの国際輸送の手配をお願いしておりましたが、プロセスが不便とのご指摘を受けたため改善する予定です。日本国内のパートナー企業様との協議を継続しており、出荷に必要なドキュメントが予め用意された「サンプル梱包キット」を準備し、集荷の手配も当方負担において行うことで、お客様側の負担を軽減する提案を今後行って参ります。

 


どんな顧客層にどんな発信を行いたいと考えていますか?:


製薬企業、化学企業のお客様には、既にToxysのサービスについてお伝えしていますが、今後は、日本でも素晴らしい企業が多く存在する化粧品メーカー、香料メーカー、食品(添加物)メーカー等へのアプローチを強化して行きたいと考えています。特に日本製の原料や製品については、当地欧州においても市場的価値が高く、これらの安全性検査を欧州に拠点を有するToxysが行うことでより高い信頼性を確保した製品展開をサポートできるものと自負しております。

 


欧州規格に則った試験成績書がレポートとして発行されるのですか?:


はい。もちろん各種規制に則った試験成績書を発行することは可能ですが、複合的な細胞毒性や遺伝毒性については、規制そのものが追い付いていないのも現状です。Toxysが提供する毒性・安全性試験は、お客様が開発した新規化合物や、新製品に使われる材料を総合的に判断することで、短期的・長期的な毒性をより適切に評価・予測できる試験法のため、開発プロセスの早い段階で、自主的に依頼されるお客様が多くいらっしゃいます。

 


日本戦略における難しさはなんでしょうか?:


一般的には、動物由来材料を用いた試験法の許容に関する違いから、非動物由来試験を行うToxysの試験についての理解が深まらない難しさや、サンプルを日本国外に発送するリスクが指摘される場合がいくつかありました。国際的に動物を用いない安全性試験方法の採用が重視される中、Toxysにおいても紹介の機会を増やして行きたいと考えています。また、サンプルの発送については、ロジスティックスの改善を行い、お客様が国内の検査機関に発送する場合とほぼ差異の無いプロセスを設定したいと考えています。

 


最後に日本の将来のお客様に向けたメッセージをお願いします:


私たちは遺伝毒性・細胞毒性のエキスパートとして、欧州における販売に直接活用いただける受託試験結果をお返しすることに加え、開発された化合物の安全性に対するリスク評価や、改良提案等の複合的なコンサルテーションも提供できるチームメンバーを揃えており、こうした姿勢が世界中のお客様からの評価につながっています。日本のお客様に対しても、言語や文化の壁を超えた価値の高いサービスを提供してまいりたいと考えております。また、今回のインタビューを実施していたいたBiospire社には日本戦略を依頼しており、ファーストコンタクトとして日本語での問い合わせ受付が可能となっています。



 

日本語問い合わせ受付: info@biospire-global.com

Toxys社問い合わせ(英語): info@toxys.com 


Biospire は、欧州・英国の事業と日本の事業を、高い技術的知見を理解しながら結び付ける2010年に発足したビジネス・リエゾン・パートナーです。Toxys社の日本戦略をサポートすると同時に、日本語でのお問い合わせ等に対応しながら、同社の日本でのプレゼンスを向上させるお手伝いを行っております。


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